だてまきは不味い

目指せ動物博士

ヒーロー

私はアニメが好きだった。

 

といってもここでいうアニメは、ギャップ萌えを狙ったイケメンが女抱くために見ているアニメや、オタクに精子ぶっかけられているような美少女が出てくるアニメではない。

 

日曜の早朝、ゴールデンタイムにやってる戦隊モノを含んだあのアニメ群のことだ。

 

今じゃ全く見ないが、中学生になって部活の大会がある日でも時間ギリギリまで見ていた。そのくらい好きだった。

 

しかし、中学生くらいになるとみんながカッコつけだして、そんなもの見なくなる。

 

私も例に漏れず、ワックスをつけることを覚え、変な匂いの香水をつけ、着崩した体操着でいかに体育の授業中にカッコいいムーブができるか。なんて事をしていた。

 

でも一個だけ漏れたのが日曜アニメである。

 

 

少し話が変わるが、小学館から出版されている「てれびくん」という未就学児童向け雑誌をご存じだろうか?

特撮、アニメ、ホビー情報を網羅した小学生のやんちゃ坊主どものバイブルとも言える雑誌なのだが、私は中学生になってもこれを読みたいという欲が抑えきれなかったのだ。

 

仮面ライダーの新しいフォームはなんだ?

新しく出てくるロボットはなんだ?

次に◯◯レンジャーの仲間になるのは何色だ?

 

とか気になって読みたいけど、買うの恥ずかしいから読めない悶々とした私だったが、持つべきものはやはり友。

 

同志、だいき君の登場である。

 

だいき君にはまだちん毛が生えていなかったようで、思春期からくる羞恥が全くなく毎月てれびくんを買っていたし、特撮好きを恥ずかし気もなく公言していた。

 

そんな彼に頼み込んで、てれびくんが発売されるとコソコソと彼の家に遊びに行き、まるでエロ本でも読んでいるかのようにひっそり読ませてもらっていたのである。

 

 

時は進み、高校生。

 

だいき君とは別の高校になり、彼との距離が離れるにつれ、私の日曜アニメに対する興味も薄れていった。

 

そんなある日、たまたま最寄り駅で彼と遭遇し「最近どう?」などと会話しながら一緒に帰っていた。

 

「今部活とか何してるの?」と聞くと

 

「◯◯レンジャーのブラックやってる!」

 

私は思う。

こいつ怪人に頭でもやられたのか?

 

「そういうボケとかいいから。もう高校生だぜ?」と私が切り返すが

 

「ほんとにブラックやってるんだって!」と彼は言う。

 

もうダメだ。

こいつはきっと怪人ノウタリンにオツムナイナイビームを受けてこんなになっちまったんだ。

仇はうつぞ。だいき。

なんて思ってると。

 

 

「戦隊モノのレンジャーショーのバイトやってて、ブラック担当なんだ!」と彼は言った。

 

 

一転。

俺はだいき君がめちゃくちゃかっこよく見えた。

 

だってレンジャーショーとはいえ、本物のブラックやってるんだぜ!?

小さい頃、テレビで、ショーで、ピンチになれば大きな声でがんばれー!と声をかけてたあのブラックに友達がなってる。

 

ヒーローになってる。

そう思った。

 

 

大人になり彼は俳優を目指し上京した。

もう何年も会ってないけど、テレビの中でヒーローになる彼を俺は待ってる。

 

顔は完全にカレーが好物のイエローがお似合いの奴だけど。

 

 

 

以上